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企業財務レポート「事業経営に、避難訓練(事業継続計画策定)を取り入れる」

事業経営に、避難訓練(事業継続計画策定)を取り入れる

解説:日本経営ウィル税理士法人
公認会計士 西村 公宏

「非日常」は「日常」と常に隣り合わせで存在する

準備も対応もできずにパニックを引き起こす

「日常」と「非日常」の距離は、どれぐらい離れているものでしょうか。多忙な「日常」に追われていると、自分がある日いきなり「非日常」に巻き込まれるとは、なかなか想像できないものです。

しかしそれは間違いだということを、新型コロナウイルスは教えてくれました。真夏の満員電車でほとんど全員がマスクをして、多くの会社でテレワークが導入されるなど、誰が想像できたでしょうか。

ただ、それでもこの新型コロナは、私たちに準備と対応の時間を比較的与えてくれています。本当の「非日常」とは、対策を考える間もなく突如やってきて、準備も対応もできずにパニックを引き起こすものです。

例えば、自然災害です。最近では球磨川の氾濫が、7月4日の早朝、多くの人たちの「日常」を突如、無慈悲に奪っていきました。

多くの先達の苦難と努力の上に成り立っている「日常」

考えてみれば、「非日常」は常に「日常」と隣り合わせで存在しています。

190万人が被災、10万5,000人あまりが亡くなったり行方不明となった関東大震災ですが、100年近く経った今でも、9月1日には各地で避難訓練が行われています。

東日本大震災でも、津波の避難訓練により多くの命が救われたと言います。

いまの平和な「日常」は、過去の多くの先達の苦難と努力の上に成り立っている。この事実を、私たちは誰も否定しないでしょう。

事業経営の避難訓練「事業継続計画」とは

経営を守るための「避難訓練」

人々が命を守る訓練とともに、事業経営においては、経営を守るための「避難訓練」というものが存在します。”Business Continuity Plan”「事業継続計画」と呼ばれるものです。

経営も常に「非日常」と隣り合わせです。「非日常」においては、「日常」での事業計画は全く役に立たないということを、多くの経営者の方々が強く感じておられることと思います。

命を守るのと同じく、経営を守ろうと思えば、危機の只中にあって迅速な意思決定を行わなければなりません。ここでも事業経営の「避難訓練」をやっているかどうかで、対処のスピードが大きく変わります。

では、事業経営の避難訓練、「事業継続計画」とは、どのように策定すればよいのでしょうか。

可能性が高いリスクに対して、重点的に対応策を考える

「事業継続計画」には一定の手順というものがあります。

最初に行うのが「リスク評価」です。あらゆる「非日常(リスク)」を想定して、その対応方法を考えるのは、現実的ではありません。そこで、発生可能性が高いリスクを抽出して、重点的に対応策を考えていくのです。

自然災害について「リスク評価」を行う場合は、政府から公表されているハザードマップが有用です。自然災害の発生地点は、ハザードマップで事前に災害が想定されていた場所とほぼ重なるからです。

ですので、本店や工場・店舗の所在地のハザードマップを確認し、「リスク」の発生可能性が高いのか低いのかを検討するだけでも、十分に「リスク評価」と呼べるでしょう。

リスク評価こそが「事業継続計画」の第一歩

例えば、湾岸で工場を営まれているとします。リスク評価をしたところ、巨大地震が発生した場合には津波で工場の大半が浸水する可能性が高いと分かったとします。

これを聞いた経営者は、地震や津波が発生した場合の備えを進められるに違いありません。

まずソフト面を考えます。気象庁の警戒レベルに応じてどのような行動をするのか。従業員の避難経路は? 緊急連絡先は? 臨時役員会や顧客への対応はどうするのか? …具体的な行動が明確になってくるでしょう。

ハード面も考えます。浸水を防ぐためには、土嚢の準備や壁面の増強が必要でしょう。それでも浸水した場合には、最も大切なものはデータ。データを保存するサーバーを1階から4階に移設する…。いきなりはできませんので、数年かけて計画的に進めていかれるはずです。

このように、リスク評価こそが「事業継続計画」の第一歩です。リスクを正確に把握することで、実効性のある計画と行動が明確になってくるのです。

今回は、リスクは隣り合わせであること、そしてリスク評価をしてみると、欠けている備えが具体的に浮かんでくるということを、ご紹介しました。

「事業継続計画」の策定は、政府も強く推奨しています。中小企業庁は中小企業の「事業継続計画」の策定支援として、「事業継続力強化計画」認定制度というものを推進しています。この制度は「事業継続計画」よりも取り組みやすい、防災・減災対策の第一歩と位置付けられています。

「事業継続力強化計画」を策定して経済産業大臣から認定を得られると、計画に関する設備投資への税制優遇・低利融資、補助金承認の優遇など、様々な支援を受けることが出来ます。

私たちも「事業継続計画」や「事業継続力強化計画」の策定を強力にバックアップしております。リスクへの備えを本気でお考えの経営者様は、ぜひご遠慮なくご相談ください。

レポートの執筆者

西村 公宏(にしむら きみひろ)
日本経営ウィル税理士法人
公認会計士

2006年公認会計士試験合格後大手監査法人に入社、上場企業等の会計監査業務に従事する。2010年公認会計士登録。2017年にウィル税理士法人(現:日本経営ウィル税理士法人)に入社し、上場企業から零細企業まで幅広い企業の税務・会計顧問業務に携わる。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

  • 事業形態 事業・国際税務
  • 種別 レポート

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